お知らせ
3月14日2013 UP
『季語百話―花をひろう』
高橋睦郎 著 中公新書 本体780円+税
「和歌や俳句のいのちでもある季語。その代表は花である」とあるように、「花なるもの」をテーマに100篇のコラムを収録しています。
春の項の「花しずめ」。わが国では古くから桜の花を稲の花の象徴とみて、散るのを防ぐ祭祀行事があります。花の散るのを疫神が飛び散る現れとみて、これを鎮めると考えるようになったのです(鎮花祭・はなしずめのまつり)。さらに御霊(政治的横死者―菅原道真・平将門など)を鎮める桜祭り、能の「西行桜」では老木の桜の精が京の桜の名所にかかわる死者たちの霊を鎮めているのだとか。
花の陰謡(かげうたい)に似たる旅寝かな 芭蕉
本書に取り上げられた季節の花や年中行事に合わせて、国内外の有名な和歌・俳句・詩・童謡なども引用されて、四季折々の自然が広がっていきます。【藤間 伴子】