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相続手続Q&A・第4回 「お墓・仏壇・位牌の相続」

どうすれば?

 墓、祭壇、位牌などを民法では「祭祀財産」と呼んでいます。この祭祀財産は相続人の間で分割しますと、祖先の祭祀をするときに不都合を生じますので、相続財産とは別個に特定の1人に受け継がせることになっています。これを祭祀承継者といいます。祭祀財産を受け継ぐ人は、被相続人(故人)が生前に指定していれば問題ありません。生前に指定する方法として遺言書作成があります。
 次に被相続人による指定がなく、遺族間での合意がない場合には、家庭裁判所の調停もしくは審判によって決められることになっています(民法897条2項)。でも実際は、相続財産の分割とセットで考えられることが多く、「長男だから」とか、「財産を多く相続するから」「本家の不動産を取得するから」などの理由で、祭祀財産を相続しています。    
 ただ最近では、預貯金や不動産などの分割を重視して、仕方なく祭祀財産を承継する方が増えてきているように思います。生前での相続対策を心配される方が多いなか、こういったことを考えておく必要性は多分にあると思います。相続対策と一言で言うことは簡単ですが、結局は財産目録を作成して、どのように残すかを考えてアドバイスを受けて遺言書を作成するというケースになりがちです。
 間違っているとは思いませんが、その方の遺志が本当の意味で反映されている遺言書は割と少ないのではないでしょうか。「心の相続」を忘れては、どんな対策をしても方向性がぶれてしまうでしょう。
 まずは自分の気持ちを整理するようなノート(「エンディングノート」と言われるものもあります)を活用しながら、祭祀財産のことも考えて専門家に相談することをおすすめします。
 先日実際にあった事例ですが、3代続いている老舗の料理屋さんで、長男と長女、次女、三女の4人が亡くなった母親の遺産を分割されました。もともと養子で入った父は20年前に亡くなっていて、母の財産というと不動産がたくさんあり、預貯金は1千万円ほどでした。
 この財産をめぐり一番問題となったのが、実は祭祀財産の件でした。長男が祭祀財産を承継することに皆さんの意見は一致したのですが、相続財産を分割する際に、等分に分けてほしいという意見が長女、次女、三女から出たのです。
 こうなってくると、大変です。祭祀財産はもともと非課税財産(相続税がかからない財産)ですし、財産評価のしようがありません。それに付け加え、お仏壇は実家にありますので、お仏壇を相続するとなると必然的にご実家の不動産を相続する必要があるのです。
 困りに困った案件で、最終的にはお金で解決せざるを得ませんでした。もし、お金が充分にない方でしたら、渋々不動産を売却して、お仏壇を持たない方法でご先祖を供養していかざるを得ないのです。「こんなことだったら、お母さんに遺言書を作ってもらってたらよかった・・・」。ご長男が私たちに伝えた悲痛の叫びでした。
 同じ失敗をしないために、ご自身の気持ちを一度整理して、安心できる状態にしておいてください。

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