- Home
- 相続手続Q&A・第5回 「妻が知らなかった夫の不動産」
相続手続Q&A・第5回 「妻が知らなかった夫の不動産」
モメる原因に
夫を亡くしたAさんが相談に来られました。Aさん夫婦には子どもがなく、今回の相続は妻であるAさんと夫のきょうだいですが、きょうだいが全員亡くなっていたため、甥姪が相続人となりました。夫の遺した財産は、家とわずかな預貯金で、Aさんの今後の生活のことを考えて、すべてをAさんが相続することで話し合いがもたれ、合意しました。
しかし、相続人の一人から、「実家の田畑・山林などの名義はどうなっていたかな?」という質問があり、市役所や法務局で調べてみると、なんと共有で所有していて、その中に、夫の名前もしっかりあったのです。先祖代々から続いている、田畑と山林の土地でした。結局、この共有持分のある不動産は、先祖から続いていることもあり、甥姪が相続することになりましたが、Aさんは知らない不動産が出てきたことで、大いに驚いていました。
このように、自宅以外にも不動産を、特に他府県・他市町村などに所有している場合は、配偶者であっても知らない場合がありますので、注意が必要です。今回は、田畑などの少額な財産でしたが、この土地が1千万円で売却可能ということであれば、もう少し「モメた」と思います。換金価値があまりない財産を押しつけあったり、高額で売却可能な不動産を取り合ったり・・・。どんな不動産でも、「モメる」原因になる可能性があることをしっかりと考えていただきたいと思います。
特に、亡くなった方のご実家の近辺では、以前に相続した土地があるかもしれません。エンディングノートなどに、生前に自分の財産を書き出しておけば、遺された家族の負担を少しでも軽減することができるでしょう。
不動産の名義変更で、仲のよかったご家族がバラバラになってしまうことも少なくありません。また、預貯金に関しても、へそくりなど通帳がないものは、手続き漏れの原因となり、後から再度遺産分割協議をやり直すケースもあります。せっかくまとまった協議内容なのに、また最初からやり直し・・・、ということになると、「まだ、財産があるんじゃないの?」「財産を隠しているのでは?」などと疑われることにもなりかねません。
さらに、保険証書などは、証書が見つからないと未請求のままで、期限切れ・・・となってしまうことも少なくありません。せっかく遺された方を守る保険であるのに、見つからなければただの紙屑です。
もうこれ以上財産はないというところまで調査をしたうえで、手続きがスムーズにできるように、エンディングノートなどを活用することも、モメないための相続対策の一つです。
誰が相続するのかを常に考えておく必要はないかもしれませんが、年に何度か、ご自身と向き合い、少しずつ、ご自身のエンディングノートを整理していくことをおすすめします。