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E-net.93号(2012年7月発行会報)より
会員の皆さまへと、同じく会員の鈴木和子さんからお手紙が届きました
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「私と空(から)の糸巻と素話と」
金子みすゞさんばりにこんな題をつけてみました。会員の皆さまお変わりないですか。私は先日、語りあいの会に出席しました。おひとりさまの暮らしの知恵というようなテーマだったと思うのです。私も夫を送り10年以上経ちました。5、6年経過した頃、この会報誌に夫と死別した前後のことを綴った一文を寄せたのでしたが、さらに5、6年経過し、少しずつ気持ちの変化とともに自分の老後をどんなふうに過ごしていけばいいのか、イメージをつくっておきたいと思うようになりました。一つの目標として、自分の日々を律していく拠りどころになるのではないかと思ったのです。
さて、語りあいの会に集まった会員の方々も一人ひとり大切な方を亡くしたという共通体験をもっていますが、今現在の心の状態はそれぞれ違います。逝かれてしまわれ、まだ年月の浅い方は、話そうとしては涙ぐまれてしまわれます。または、おひとりさまの日々を力いっぱい生きて人生を楽しんでおられる方、夫との死別には気持ちの決着がついたものの、お子様のことで少なからず胸を痛めておられる方もいらっしゃいました。でも参加してみてよかったなと思うことは、誰にとっても足を運んできて受け入れられる場所が、仲間があるということです。私も皆さんのお話を聞いて、自分の暮らし方、生き方の微調整をさせていただく思いをもらいました。
さて、タイトルのことですが……。今の私の暮らしの楽しみは糸巻を次々と空(から)にしていくこと、空の糸巻がたまることが嬉しいのです。これまでは当然としてゴミ箱行きでしたが、1、2年前からミシンの袖の引き出しにため始めました。ほぼ引き出しいっぱいになりました。30年近くパッチワークや手芸が好きで続けていますが、作品はすべて生活の用にするものばかりで立派なものはありません。でもある時思いついたのです。私の生活の中でこんなにたくさん針を持つ時間があったのだ、と。そしてその縫い目の一針一針、使い終えた空の糸巻が私の幸せの象徴に思えたのです。
それから、もう一つの私の楽しみは素話(すばなし)を語ることです。幼児からせいぜい中学生にですが、昔話や創作品を「お話し会」として仲間と届けます。きっとエンディングセンターの会員の中にも同好の方がおられると思います。私は物語が好きで、かつ子ども好きなのです。で、こうして必然的にこんな楽しみをもつようになりました。私は、「人は子ども時代こそ幸せに包まれるべき」と強く思っていますので、肉声で、よいお話を心こめて届けることを心から喜び楽しんでおります。おおぜいの会員さんの中には私と似た楽しみをおもちの方もいるのでは……と考え、できれば出会ってよい知恵を交換し合いたいものと思い立ってペンをとりました。まもなく春です。4月には桜葬メモリアルも催されますね。再びお会いできることを楽しみにしております。では、ごきげんよう。